澤井祐樹
『もしもし』
私は周りの車の音に負けないボリュームでこたえました。
奥様に何も伝えず、感じるままに飛び出した私は、新しい道具を使うため池のほとりでごそごそしていると伝えると、
大人げないと、言われてしまいました。
確かに、買ったその日に無理やり計画性も無く、家を飛び出し、そう思われても仕方がありません。
しかし、新しいアイテムを手にして、使わないというのもヲタクとして、我慢できません。
『我慢でできんかってんや。大人とかそんなん関係ないわ。』と、声を荒げました。
大声を出した瞬間、犬の散歩をしていたおばさまが、こっちを見て、向こうに走り出しました。
この瞬間、私は悟りました。
この電話の会話と、私の体勢からして、トイレが我慢できなかった大人にみえていたことを。
おわり。