ヤンキーとカレー
襟足の長い、いや、長すぎる彼は卵みたいな字でおなじみのお店に一人で座っていました。
腹ぺこの私は、食券のカレーのボタンを勢いよく押しました。
襟足の長い、いや、長過ぎる彼は、サラダの食べ終わったお皿をそのままに携帯電話をいじくっていました。
店員のおじさんが食券をとりにきて、注文の確認をします。 http://essay-it.com/
襟足の長い、いや、長過ぎる彼はイライラしながらこちらを見ました。
すると、大きな声で店員のおじさんに『カレーまだですか?!』と怒鳴るように言いました。
彼のカレーは店員のおじさんがすっかり忘れていたのです。
お客様と店員一対一で忘れるとは店員のおじさんも、ヤンキーお断りレベルです。
いかにも忘れてないでと余裕の表情で私のところと、襟足の長い、いや、長過ぎる彼のところにカレーを持って行きました。
腹ぺこな私は熱いカレーをフーフーしながら、ちびちび食べました。
襟足の長い、いや、長過ぎる彼は、『すいません』と怒鳴りました。
なんですか?と店員のおじさまは、今度は何やねんという顔で、めんどくさそうに出てきました。
襟足の長い、いや、長過ぎる彼は、『これ大盛りですか?』と怒鳴りました。
店員のおじさんはこっちをちらりと見て、びっくりした顔をしています。
そうです。私のカレーが大盛りだったのです。
店員のおじさんは、襟足の長い、いや、長過ぎる彼に、『はい、大盛りです』と答え私の方をちらりと見ました。
これは、店員のおじさんが、私に助けを求めているのです。
襟足の長い、いや、長過ぎる彼に気づかれる前になんとかしなくてはなりません。
こうなれば本気をだすしかありません。
『メタモルフォーゼ!』
京都府南部のダイソンと呼ばれた私は、かわらない吸引力で、どんどんカレーを吸い上げます。
私と店員のおじさんの絆はカレーの熱さなんて忘れさせてくれます。
『ごちそうさまでした』
私は席を立ち、店員のおじさんの方を見ました。
店員のおじさんはこちらを見てうなずきました
おしまい